SSブログ

特許権の存続期間の延長って? [特許申請・特許出願]

特許権の存続期間は特許出願の日から20年と特許法で定められていますが、この存続期間が延長されることがあるそうです。

特許権を取得できていても、医薬品の発明では薬事法で医薬品の承認、農薬の発明では農薬取締法で農薬の登録を受けないと特許発明を実施することができない場合があります。
例えば薬事法で医薬品の承認を受けるためには、臨床試験による実験データなどが要求されるのでデータの収集に長期間かかったり、また審査にも長期間かかってしまいます。

せっかく特許権が認められたのに、薬事法での承認などを受けるために特許発明が実施できない期間があったんじゃかわいそうじゃないかということで、医薬品、農薬の特許発明についてはその実施できなかった分だけ特許権の存続期間の延長を認めましょうという制度があります。

存続期間の延長を求める場合には、延長登録の出願をしなければいけません。普通の特許出願以外にも出願の種類ってあったんですね。特許権の存続期間の延長登録出願の場合にも、審査官による審査が行われて必要な要件を満たしていないと、拒絶理由が通知され、拒絶査定になるそうです。審査の内容は普通の特許出願とは異なるようですが、普通の特許出願の流れと同じですね。
拒絶査定に不服がある場合には、拒絶査定不服審判を請求することができて、拒絶審決に不服がある場合には、知的財産高等裁判所に拒絶審決取消訴訟を起こすことができます。これも普通の特許出願の流れと同じです。

この特許権の存続期間の延長登録は、ドラッグデリバリーシステム(DDS)製剤では認められなくて議論になっているようです。ドラッグデリバリーシステムというのは、薬物伝達(輸送、送達)システムのことで、薬がよく効くように考えられた投与方法などのことだそう。
存続期間の延長登録は、有効成分や効能、効果が新しい医薬品には認められやすいようですが、有効成分や効能、効果は従来と同じで剤型のみが異なったDDS製剤には認めてもらえなかったそうです。
DDS製剤でも、薬事法での承認のためには、臨床試験のデータの収集が必要であって長期間かかるし、延長登録を認めてあげないとよくないんじゃないのという議論が持ち上がっているとのこと。

そういう流れの中で、あるDDS製剤に関する特許権の存続期間延長登録出願の拒絶審決取消訴訟の判決で拒絶審決が取り消されたそうです。特許庁の審判官が拒絶審決とした判断には誤りがあったよという判決です。特許庁は最高裁に上告受理の申立てをしたようですが上告には理由がないとして最近棄却されました。
平成21(行ヒ)326 審決取消請求事件 平成23年04月28日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 知的財産高等裁判所(裁判所ウェブサイト)

特許庁側は、既に有効成分(塩酸モルヒネ)、効能・効果(中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛)が同じ別の医薬品が、薬事法による製造販売の承認を受けてるんだから、延長登録を求めてる特許発明の実施の禁止はそれでもう解除されちゃってますよ、だから延長登録は認めませんみたいな考え方だったようです。
存続期間の延長が認められた場合の特許権の効力は物(有効成分)と用途(効能・効果)の観点だけから規定されてるんじゃないの?とか、薬事法で大事なのは「有効成分」と「効能・効果」であることが多いじゃんとか、法的安定性を欠いちゃまずいでしょみたいな理由に基づいた考え方のようです。

でも、最高裁では、先に薬事法による承認を受けた医薬品は、延長登録を求めてる特許発明の技術的範囲には属していない、特許発明の実施にはかかわってこないんだから、先に承認があったからっていっても延長登録出願を拒絶する理由にはならないでしょう、基本に戻って存続期間の延長登録制度を設けた目的を思い出してみてよみたいな判断をしたようです。
これから延長登録の対象が広がっていくことになるのかもしれません。


この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。